大腸菌は、人や家畜の腸内に生息しています。ほとんどの大腸菌は特に病気を起こすことはありません。しかし、一部の大腸菌は、下痢などの症状を引き起こすことがあり、これらは病原大腸菌と総称されます。病原大腸菌は、病気の起こり方からいくつかの種類に分けられ、このうちベロ毒素を産生し、溶血性尿毒症症候群(HUS)などを起こす病原性の強いものが腸管出血性大腸菌と呼ばれます。
腸管出血性大腸菌は、O抗原の種類によりさらに分類され、中でも検出例がもっとも多く代表的なものがO157です。そのほかにも、O26やO111などが知られています。
腸管出血性大腸菌による国内の食中毒事例は、今回富山県などで発生した食中毒事件同様、焼き肉店などの飲食店で食肉を生や加熱不足で食べたことによる感染が多いです。また、汚染食品から手指や調理器具を介して二次汚染された食品が原因となる可能性もあります。
そのほかにも、感染者から排出された菌が手などに付着して二次感染する場合や、動物との接触による感染事例が報告されています。
また、腸管出血性大腸菌ではありませんが、ふだん口にすることの多い卵はサルモネラ菌、刺身は腸炎ビブリオによる食中毒の危険性があるため、取り扱いには注意が必要です。
参考サイト
神奈川県 鎌倉保健福祉事務所「サルモネラ食中毒を防ごう~たまごの取扱い~」
食中毒予防の三原則は、菌を「付けない・増やさない・殺す」です。腸管出血性大腸菌においても、この基本を守れば予防することができます。
肉の場合、生肉を避け、加熱処理を行うことが重要です。菌を死滅させるには75℃で1分以上の加熱が必要です。生食用野菜の場合、流水でよく洗いましょう。100℃の熱湯で約5秒の湯がきも有効です。
また、まな板や包丁、ふきんなどを介した二次感染にも注意が必要です。生肉や魚を扱った調理器具で、続けて野菜や果物など、生食用の食品を扱うことは避けるようにしましょう。使用したまな板や包丁は一度よく洗い、熱湯で消毒したのち使うことが大切です。
参考サイト
国立感染症研究所 感染症情報センター
「小児の養育者、保育施設、介護保険施設等に対する腸管出血性大腸菌感染症予防啓発の重要性について」