2018年5月17日
胃潰瘍とは、胃酸がなんらかの原因によって胃粘膜を消化し、胃の壁がただれて傷ついた状態をいいます。40~50歳代によくみられ、胃の折れ曲がった胃角部にできることが多いです。胃潰瘍に多い症状は、食事中や食後のみぞおちから左にかけての鈍い痛みです。痛みの程度は人によってさまざまで、まったく痛みを感じない人もいます。また胸やけ、すっぱいゲップ、吐き気などを感じることもあります。症状がひどくなると胃壁から出血し、血を吐いたり血便が出ることがあります。
胃は本来、胃酸から胃を守るために胃粘液を分泌し、胃酸から壁を守っています。しかし、過労や精神的なストレスなどで自律神経の働きが乱れると、胃酸と胃粘液のバランスがくずれ、胃酸が多い状態となり、胃粘膜が傷つきやすい状態になります。その結果、胃酸が胃粘膜を傷つけることで潰瘍ができます。また、脳や肺、腎臓などの病気や、解熱消炎鎮痛薬、抗血小板薬、抗凝固薬などを継続して服用していると胃酸と胃粘液のバランスがくずれ、胃潰瘍の原因となる場合があります。近年では、胃潰瘍の70~90%で、胃酸の中でも生き延びられるピロリ菌の感染が認められ、原因のひとつとされています。
胃潰瘍には、急性胃潰瘍と慢性胃潰瘍があり、急性胃潰瘍は浅い不整形の潰瘍やびらんが多発することが多く、慢性胃潰瘍は大部分が単発です。早期に治る場合もありますが、再発を繰り返すこともあります。
胃潰瘍は、潰瘍の活動期に、食後少し時間が経過するとみぞおちの痛みや背中の痛みが起こります。この症状は軽食をとると痛みがやわらぐ傾向にあり、治癒期には症状があらわれません。潰瘍の増悪期には、食後や空腹時を問わず痛むことがあります。高齢者は胃潰瘍の出血によって、心筋梗塞や狭心症を引き起こす可能性もあり、注意が必要です。
● 胃潰瘍を疑う症状
胃潰瘍が疑われた場合は、バリウム検査や内視鏡検査で潰瘍の有無を確認します。もし潰瘍が見つかった場合は、がん細胞がないか組織をとって調べます。がん細胞がなければ、ほとんどの場合、胃酸を抑える薬と食事療法を含む生活指導で治療します。最近はよく効く薬があるため、入院や手術が必要な患者は減ってきています。しかし胃に穴があいてしまった場合は手術が必要になります。
また、ピロリ菌感染が原因の場合は、医師の処方に従った薬剤の服用による除菌を行うことが可能です。胃酸の過剰な放出を防ぐためには、胃に負担をかけない食事を心がけることが大切です。食べすぎや飲みすぎ、たばこの吸いすぎに気をつけましょう。睡眠を十分にとり、規則正しい生活を送ることも大切です。また、薬の中には胃粘膜を傷害するものもあります。上記の胃潰瘍が疑われる症状がある場合は、かかりつけ医に相談しましょう。