2018年6月15日
月経期間中に月経に伴って起こる病的な症状を「月経困難症」といいます。腹痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、食欲不振、憂うつなどさまざまな症状が起こります。月経困難症は、子宮筋腫や子宮内膜症など、なんらかの病気によって起こる「器質性(続発性)月経困難症」と、はっきりとした原因がない「機能性(原発性)月経困難症」に分けられます。最も頻度が多い症状が月経痛で月経困難症と同じように考えられることもあります。痛みが強くて学校や会社を休んでしまったり、起き上がるのがつらいなど日常生活に支障をきたすほど強い月経痛には治療が必要です。
原因となる疾患がある場合の月経困難症を器質性(続発性)月経困難症といいます。器質性月経困難症を引き起こす主な疾患は、「子宮内膜症」「子宮筋腫」「子宮腺筋症」です。月経痛が長く続く場合や月経後まで続く場合、痛みが強くなってきた場合、月経に関係なく痛みが起こる場合はなんらかの病気がある可能性が高く注意が必要です。多くは20代以上で起こり、加齢とともに強まっていく傾向があります。原因疾患の状態やどちらかの卵巣が痛みに敏感な状態になることで、隔月で月経痛が強くなることもあります。また子宮や卵管、卵巣の感染症や骨盤腹膜炎、腹部臓器間の癒着により症状がでたり、子宮頸管ポリープの切除、子宮頸部異形成または癌の治療後に症状がでたりすることがあります。月経に関係なく痛みを起こすこともあります。原因疾患の治療を行いますが、鎮痛剤や漢方薬を使った対症療法で経過をみる場合もあります。
明らかな疾患がみつからない場合の月経困難症のことをいいます。月経開始から間もない思春期女性に多く、経血を押し出すときの子宮の収縮、ホルモンバランスのくずれによる骨盤内のうっ血、全身の血行の悪化、ストレスなどが原因で起こります。一般的に10代後半までは子宮頸管が細いため、月経血が流れるときに強く痛みますが、体が成熟するにつれて軽くなります。月経の2~3日目にギューッと押し出されるような腹痛、肩こり、むくみ、吐き気、イライラ、のぼせ、眠気などが起こります。さらに骨盤内のうっ血によって下半身の血流が悪くなることで腰痛を招いたり、自律神経の乱れから頭痛が起きたりと腹痛以外の痛みを感じる場合もあります。機能性月経困難症の場合は、原因となる疾患が見つからないだけで、実は子宮内膜症のごく初期の段階という場合もあるため注意が必要です。
機能性月経困難症の場合は、鎮痛剤や漢方薬を用いて対症療法を行うことが多いですが、経口避妊薬や経口避妊薬と同じ成分で保険診療可能なLEP製剤と呼ばれる薬剤を使う場合もあります。痛みをひどくなるまで我慢すると痛みの原因となる物質が体内に増え、鎮痛剤が効きにくくなります。鎮痛剤を使用する場合は、痛みが出る少し前に飲むのが効果的です。痛みが増してきたり、2日目以降も軽くならない、毎回痛みで寝込んでしまうなど日常生活に支障が出る場合は、婦人科を受診してみましょう。また、急に月経痛がひどくなった、痛みに加えて経血量が増えている、排便のときに痛みを感じるなどの症状が生じた場合は、器質性月経困難症が考えられるため、早めに医療機関を受診しましょう。