2019年8月14日
くも膜下出血とは、脳血管障害(脳卒中)の一種です。原因はさまざまですが、多くは脳の血管の一部にできた動脈瘤が破裂し、脳と脳脊髄液全体を包んでいる膜(くも膜)の内側の液体がたまっている場所(くも膜下腔)に、出血した血液が流れこむことで起こります。発症すると、急激に頭の中の圧力が上がることで脳が圧迫され、血液の流れに悪影響を与えます。血液の流れが悪くなると心臓や肺の働きにも異常が起き、体全体の機能が低下し死に至ることがあります。症状は、出血量によって異なりますが、激しい頭痛や吐き気、意識障害などがあります。このような症状があらわれたら、すぐに救急車を呼んで医療機関を受診する必要があります。治った場合でも、後遺症が残る可能性が高く、早期発見と早期治療が非常に重要となります。
多くの場合、予兆はありませんが、まれに出血直前に症状が出ることもあります。たとえば、脳動脈瘤が急に大きくなった時に、近くの神経を圧迫することでまぶたが下がってしまう「眼瞼下垂」や、モノが二重に見える「複視」が急激に進むなどの症状が出る場合があります。また、後頭部の動脈に亀裂が入ることで動脈が膨れてくる「解離性椎骨動脈瘤(かいりせいついこつどうみゃくりゅう)」の場合には、亀裂が入る時に後頭部や頚部に痛みを伴います。進行すると、血管が破裂して重篤なくも膜下出血を引き起こす場合があります。そのため、元々頭痛持ちではなかった人が、重度な後頭部の痛みを感じた場合には、解離性椎骨動脈瘤を疑うようにしましょう。
くも膜下出血の大半は、脳動脈にできた脳動脈瘤が破裂して起こります。脳動脈瘤とは、血管の薄い部分に長時間にわたって強い血流を受け、少しずつ血管が膨らんでできたコブのことをいいます。特に血管が分岐する部分では、強い血流を受けるため、コブができやすくなります。このコブが、何らかのきっかけで破れたり、血流を受け止められなくなるとくも膜下出血が起きます。また、喫煙、高血圧、大量の飲酒は、脳動脈瘤が破裂する危険性を高めるといわれています。
くも膜下出血による後遺症は複数あります。くも膜下出血が起きると、血液が脳を圧迫し、脳の組織が破壊されてしまいます。破壊された部分によっては、しびれや麻痺、言語障害などの後遺症が生じます。
くも膜下出血の診断は、脳動脈瘤などの原因を調べます。疑われた場合には、出血源の治療を行い、再出血を防止します。開頭手術またはカテーテル手術のどちらか、あるいはその両方が選択されます。治療後は、少なくとも2~3週間は合併症に気を付けなければいけません。代表されるのは脳血管攣縮です。脳の中の動脈が細くなり、脳への血液の流れが悪くなります。悪化すると脳梗塞を引き起こし、意識障害や麻痺が出たり、最悪の場合は死に至ります。そのほかにも、頭に脳脊髄液がたまってしまう水頭症などがあり、注意が必要です。
現在の医療では、薬で脳動脈瘤を小さくしたり、脳動脈瘤の発生そのものを予防する方法はみつかっていません。そのため、予防には脳ドックなどを定期的に受け、早期発見することが重要です。脳動脈瘤はCTスキャン(3DーCTアンギオグラフィー)やMRアンギオグラフィーによって発見することができます。脳動脈瘤があったとしても、くも膜下出血がすぐに発症するわけではありません。コブの大きさ、形、場所、発症した人の年齢などによって対応が異なるため、脳動脈瘤が発見された場合には、専門医を受診するようにしましょう。