2020年2月10日
ロタウイルスによって引き起こされる急性胃腸炎です。ほとんどの子どもが4~5歳までに感染します。乳幼児(特に1歳児)に多く、症状が重くなるのも乳幼児です。入院が必要な乳幼児の半数前後はロタウイルスが原因です。生涯を通して繰り返し感染しますが、年長児や成人は症状が軽いか無症状(不顕性感染)です。ノロウイルスと比べてもウイルス量が多く、下痢便1g中に1000億から1兆個(ノロウイルスの100万倍)ものウイルスが含まれます。
以前は冬季下痢症と言われ、12~1月に流行していましたが、最近は3~5月に流行するようになりました。初冬(11~1月)にはノロウイルスが流行するようになり、それと入れ替わりにロタウイルスが流行します。
潜伏期間は2~4日で、症状は嘔吐、下痢、発熱です。水のような便(時に米のとぎ汁様)と嘔吐を繰り返します。しばしば重症化し、入院治療が必要となることも稀ではありません。合併症として、電解質異常、麻痺性イレウス、痙攣、肝機能障害、急性腎不全、脳症、心筋炎などがあります。発展途上国では年間約80万人の乳幼児が死亡しますが、日本では死亡することは少なく、通常は1週間程度で治癒します。
ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はありません。そのため脱水を防ぐための水分補給や、体力を消耗したりしないように栄養補給をするなどの治療が中心となります。脱水症状がひどい時には、医療機関で点滴を行うなどの治療が必要になります。
感染を広げないようにするには、オムツの適切な処理や手洗いの徹底などが必要です。オムツを交換する時は使い捨てのゴム手袋などを使い、ポリ袋に入れて捨てましょう。手洗いの時には、せっけんで30秒以上もみ洗いします。ロタウイルスにはアルコールなどの消毒薬ではあまり効き目がないため、衣類が便や吐物で汚れた時には家庭用塩素系漂白剤でつけおき消毒した後、ほかの衣類とわけて洗濯してください。
ロタウイルスは感染力が非常に強く、4~5歳までにほとんどの子どもが感染します。そのため、現時点ではワクチン以外には有効な予防法はありません。
ロタウイルス感染症は初回感染時の症状が最も重く、2回目以降の感染は症状が軽くなります。ワクチンはその性質を利用して、ロタワクチンの重症化を予防することが目的です。現在ロタウイルスワクチンは、1価と5価のワクチンがあります。どちらのワクチンも同等の効果があります。現在は任意接種で有料ですが、重症化しやすい疾患なので、ワクチン接種を強くお勧めします。生後2ヶ月からの接種で、他のワクチンと同時に接種出来ます。詳細はお近くの医療機関にお問い合わせください。
尚、令和2年8月以降に生まれる乳児からは定期接種となり、無料で受けられるようになります。