2020年3月10日
帯状疱疹は、体内に潜伏していたヘルペスウイルスの一種である水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスが再活性化することによって発症します。ウイルスに初めて感染した時には水ぼうそうとして発症し、治った後も体内の脊髄から出る神経節に潜んでいます。普段は免疫力によって抑えられていますが、加齢やストレス、疲労などで免疫力が低下するとウイルスが活動を再開し、神経を伝って神経節から皮膚へと移動することで、身体の左右どちらかの神経に沿って痛みや発疹の症状が現れます。症状は上半身に多くみられ、腕や胸、背中などを中心に、顔や首などに現れることもあります。
日本人では、50代から発症率が高くなり、年齢が上がるにつれて増加していきますが、過労やストレスによって若い人に発症することもあります。帯状疱疹は水ぼうそうになったことがある人であれば、誰でも発症する可能性があります。また再発の可能性は低いといわれていますが、免疫力が著しく低下したり、加齢によって再発する場合もあります。
帯状疱疹として人にうつることはありませんが、乳幼児など水ぼうそうにかかったことのない人には、水ぼうそうとしてうつる可能性があり注意が必要です。
帯状疱疹の症状は多くの場合、皮膚に神経痛のような痛みから始まります。痛みの程度には個人差があり、皮膚の違和感やかゆみ、しびれとして感じるほどの痛みから、針で刺されたような痛みや焼けるような痛みまでさまざまです。身体の左右どちらかに、だんだんと水ぶくれのような赤い発疹が現れ、痛みが強くなっていきます。眠れないほどの痛みを伴うこともあり、症状は3~4週間ほど続きます。
帯状疱疹は神経の流れに沿って症状が出るため、顔面に発症した場合には、目や耳の感覚器を傷つけて角膜炎や結膜炎を引き起こしたり、まれに耳鳴りや難聴、顔面麻痺などの症状を引き起こすことがあります。さらに腰部や下腹部に発症すると、運動神経を傷つけて便秘になったり、尿が出にくくなる場合があります。これらの症状は、後遺症として残ることがあるため注意が必要です。
帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬によってウイルスの増殖を抑制します。全身に水ぶくれが見られたり、高熱を伴う場合は、点滴による治療が必要な場合もあります。発疹が消えた後も痛みが残っている場合には、帯状疱疹後神経痛(PHN)の可能性があります。加齢とともに移行リスクは高くなり、高齢者では症状や治療が長引く可能性があります。これらの皮膚症状や痛みを緩和し、合併症や後遺症を軽減するため、できるだけ早期の治療開始が重要です。
帯状疱疹を予防するには、免疫力が低下しないように日ごろの体調管理が大切です。食事や睡眠をしっかりとり、適度に運動したり、疲れたらリラックスをすることで、ストレスを減らしましょう。50歳以上の方は、ワクチンで予防できます。加齢とともに弱まったウイルスへの免疫力を高め、病気の発症や重症化を抑えられます。
帯状疱疹になると、日常生活に支障をきたすことがあります。日ごろの生活から見直し、帯状疱疹にならないよう心がけましょう。