2020年4月1日
心臓は収縮と拡張を絶えず繰り返しながら全身に血液を送っています。そのため心臓の筋肉自体の細胞も、多量の血液を必要としています。心筋梗塞は、心臓の筋肉に血液を供給している冠動脈に動脈硬化が起き、狭窄や脱水で血栓が出来て血流が妨げられ、心筋が血液不足になり細胞が壊れてしまう病態です。その結果胸に激痛が走り、呼吸困難や脈の乱れ、吐き気、冷や汗、顔面蒼白などの症状を引き起こします。痛みは20分ほどから数時間にわたって続くことがあります。
胸の激痛だけでなく、胃の付近にもおこることがあります(放散痛)。心臓の血管が一瞬で詰まると、症状があらわれることなく突然死することもあります。胸の激痛が治まった後も、心臓の壊れた細胞部分が線維のような組織に置き換わり、後遺症として、心臓の収縮や拡張が弱くなって出てくる心不全症状(呼吸苦、浮腫など)や、心拍のリズムが乱れる不整脈症状が残ります。
心筋梗塞の原因としては、加齢以外に、喫煙や糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病が発症の誘因となる危険因子であることがわかっており、狭心症から心筋梗塞へと進行することもあります。また発症は冬場の早朝に多く、同じ室内にいても温度差で血圧に大きな変動を生じ、心臓や血管に負担をかけやすいためといれています。
心筋梗塞で死亡する人の半数以上が、発症から1時間以内で亡くなっています。原因のほとんどは不整脈のためで、心臓から血液が送り出せなくなることで重要な臓器に血液がいかなくなり、やがて心臓が停止し死亡してしまいます。不整脈の危険性があり、かつ心筋梗塞が疑われる時には一刻も早く医療機関を受診することが大切です。
心筋梗塞は生活習慣病が原因疾患として重要視されていますが、他にもストレスやうつが関わっていることがあきらかになっています。テキパキと行動するなど完璧主義でしっかりとした人ほど心筋梗塞になる可能性が高く、精神的・身体的ストレスが何らかの原因となることが報告されました。心筋梗塞の発症は午前中に多いですが、働き盛りの若い喫煙者の男性は、夜の遅い時間の就業中に発症することがあり、社会や経済的要因とのかかわりがあることがわかります。
心筋梗塞の大きなリスクとなっているのは脂質異常症や高血圧、糖尿病などの生活習慣病です。動脈硬化の進行予防のためにも、危険因子を治療し、禁煙することが大切です。脂質値や血圧、血糖値などをしっかりとコントロールすることで、心筋梗塞になりにくくなるということがわかっています。近年では隠れ肥満が増えておりその怖さが注目されています。肥満やメタボリックシンドロームの方は、減量することで危険因子の多くを改善できます。
体験したことがない激しい胸痛や、圧迫感のある胸苦しさが15~20分ほど続いた場合は、早急に救急車を呼びましょう。最も重要な治療は、再灌流療法で、閉塞した冠動脈を再開通させることです。発症6時間以内に血栓溶解療法や冠動脈形成術を実施し、再灌流できれば心臓の筋肉へのダメージを減らすことができます。
狭心症も心筋梗塞も心電図に変化が現れる場合が多く、トロポニンという検査で迅速に心筋梗塞を診断する事も可能です。
心筋梗塞は早急に治療することが重要になります。少しでも違和感を感じたら、我慢せずにすぐに救急車を呼び、医療機関を受診しましょう。