2020年6月8日
肩関節は上腕骨、肩甲骨、鎖骨の3つの骨と、その周りを支える筋肉で構成されています。人体の中で最も可動域が広い関節ですが、大きな動きに伴って、負担も多くかかっています。肩関節の老化が進み、筋肉が硬くなっている状態で酷使すると、周囲の組織に炎症や損傷が起こります。肩関節に痛みが生じるため、関節の動きが悪くなります。さらに進行すると、肩関節の動きをよくする肩峰下滑液包や関節を包む関節包が癒着し、肩関節の可動域が制限される「拘縮」や「凍結肩」となり、より一層動きが悪くなります。
発症すると、服の着脱や髪を整えるのが難しくなったり、エプロンが後ろで結べなくなったりなど日常生活の活動が制限されます。夜になると、夜間痛と呼ばれる眠れないほどのズキズキとした痛みが生じる場合もあります。
通常は片側にだけ発症し、回復すると同側に再発することはほとんどないため、肩の痛みが繰り返す場合には、石灰沈着性腱板炎や肩腱板断裂などほかの病気を疑う必要があります。
肩関節周囲炎の病期は、症状の推移に伴って、急性期、慢性期、回復期の3段階に分けることができます。「急性期(炎症期)」には、動作を行うときに痛みが生じるほか、安静時痛や夜間痛があらわれ、拘縮の状態が徐々に進行していきます。期間は約2週間です。「慢性期(拘縮期)」には、痛みは軽減しますが、拘縮の症状が進行し、この状態が6ヵ月ほど続きます。「回復期」には、拘縮が徐々に改善され、可動域が回復していきます。自然治癒の場合、この3段階の病期を経て、回復までにおよそ1年ほどの時間を要することもあります。
肩関節周囲炎は、適切に治療をすることで、痛みを軽減させ、早期回復が見込めます。病期に合わせた薬物療法、運動療法で改善することが多く、手術は必要ない場合がほとんどです。急性期は痛みが強いため、三角巾やアームスリングなどで安静にしながら、非ステロイド性消炎鎮痛薬等の経口剤を用いた薬物療法を行います。痛みが強い場合には、肩峰下滑液包内または肩関節腔内に、ステロイドと局所麻酔薬の混合液や、ヒアルロン酸ナトリウムを注射する方法も用いられます。慢性期には、可動域の制限を予防し、改善する運動療法を行います。例えば、前かがみの姿勢で腕の力を抜いて、振り子のように前後・左右に円を描くように動かす運動や、両手を壁に当て、腕立て伏せのような動きを行う運動などがあります。血行の促進や痛みの軽減のために、運動療法と並行して、温熱・冷熱療法や超音波治療法を行うこともあります。肩関節周囲炎を発症してから治療に積極的に取り組むことはもちろん、日ごろから適度な肩の運動を心がけ、肩周辺の筋肉を強化するなどの予防も大切です。入浴で肩を温めるのも効果的です。症状が疑われた場合には、早めに医療機関を受診しましょう。