2022年6月10日
嚥下障害は病気や加齢などが原因で、食事の際の動作に支障をきたしている状態です。飲み込みにくさやむせこみのほか、食べ物が口からこぼれるなどの症状があります。ただしこれらの症状を自覚していなくても、気づかぬうちに嚥下障害を発症していることもあるので、食事中に限らず、夜間の咳や体重の減少など症状が疑われる場合にはかかりつけ医に相談するようにしましょう。
私たちは食事の際、舌や頬を使って口の奥からのどに食べ物を送りこんだり、食道の入り口の筋肉を収縮させて食物の逆流を防いだりと、さまざまな部位を動かしています。嚥下障害は、これらの一連の食事の動作に支障をきたしている状態をいいます。
嚥下障害には器質的障害と機能的障害、心理的原因の3つの原因があります。
器質的障害は口やのどをはじめとする嚥下に関わる部位の構造の異常です。口内炎や歯槽膿漏などの炎症でうまく咀嚼できなかったり、口やのど、食道にできた腫瘍が食べ物の通り道を塞いでしまうことなどがあります。
機能的障害は、神経や筋肉の異常に伴う口やのどの機能低下です。原因疾患には、脳卒中やパーキンソン病などがあげられます。
そのほか、歯が少なくなったり、飲み込む力が弱くなったりといった加齢に伴う変化でも、嚥下障害は起こりやすくなります。
心理的原因は、うつ病やストレスなどの心因性疾患によるものです。心理的な疾患が原因となってのどの違和感や飲み込みにくさを感じて嚥下障害を起こします。
嚥下障害の症状は多岐にわたります。代表的な症状である飲み込みにくさ、むせこみのほか、食べ物が口からこぼれる、のどや口に食べ物が残っている感覚などもあります。また高齢の場合にはむせ込む力が弱くなり、気道に食物が入って誤嚥性肺炎を引き起こす可能性があります。
これらの自覚症状がない場合でも、発熱や夜間の咳、体重が1ヵ月で5%以上減少するなどの症状がある場合には、誤嚥性肺炎が疑われるため医療機関を受診しましょう。
嚥下障害の治療には、訓練と手術があります。
治療として多く用いられる間接訓練は食物を使わずに行う舌や口のトレーニングです。咀嚼と嚥下機能の回復に効果があります。唇や顎などを動かして筋力を強化したり、氷水に浸した綿棒で口の中を刺激して嚥下反射を促進したりといった方法があります。
また食物を使って行う直接訓練は、患者の病態に沿って食べ物の大きさや柔らかさを変え、徐々に通常の食事が摂れるようにします。誤嚥の危険を伴うため、障害の程度を判断して適切な難易度で行う必要があります。
重度の嚥下障害の場合や、訓練を行っても効果がない場合には手術を行います。食道や、のどなど機能が低下している部位によって術式は異なります。
医療機関を受診して、適切な処置を受けましょう。