2016年10月11日
虫垂炎は、虫垂に化膿性の炎症が起こる病気です。一般的には、「盲腸」あるいは「盲腸炎」ともいう通称で知られています。腹部の病気のなかでも頻度が高く、15人に1人が一生に一度かかるといわれています。虫垂炎の発症年齢のピークは10~20代ですが、子どもや高齢者も含めてどの年齢層でもみられます。
虫垂炎は、時間の経過とともにどんどん悪化していきます。初期は軽い炎症を起こしている状態ですが、進行すると腹膜炎を併発する場合もあり、症状が出始めてから24時間前後でその危険性は高まります。腹膜炎を併発したり、細菌が血流に乗って全身に広がる敗血症になると命に関わることもあるため、初期段階での発見・早期治療が重要です。
初期症状として多いのは、上腹部(みぞおち)またはへそ周辺の腹痛です。腹痛は時間の経過とともに右下腹部へと移動します。吐き気や嘔吐はこの経過中に起こります。発熱は37度台の微熱が多く、39度以上の高熱がでた場合は、腹膜炎や膿瘍形成を考える必要があります。しかし、こうした症状は虫垂炎に特有というわけではなく、尿路結石、急性腸炎、骨盤内での炎症などでもみられます。虫垂炎の場合は、右下腹部を押したときに痛みます。さらに、急性腹膜炎を合併した場合には、腹部を圧迫して手を離す瞬間に痛みが増すのが特徴です。
虫垂炎は、治療の際に症状の進行具合によって、3段階に分けられます。
(1) カタル性虫垂炎 | 虫垂炎の初期段階。炎症の程度が一番軽い状態。この段階では、抗生物質による治療も可能になります。ただし、薬物療法の場合、10~20%の割合で再発します。 |
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(2) 蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)虫垂炎 | 虫垂の中に膿がたまっている状態。放置すると虫垂の壁に孔があき、病状は悪化します。この段階では、投薬による治療は行えず、虫垂を切除する手術を行います。 |
(3) 壊疽性(えそせい)虫垂炎 | 炎症がかなり進行している最も深刻な状態。虫垂組織が壊死し、虫垂の壁に孔があいているため、腹膜炎を合併することがあります。敗血症になり命の危険があるため、早急に手術する必要があります。 |
虫垂炎は自然によくなることはありません。特に子どもの場合は、症状が起きてから穿孔を起こすまでの時間が短く、命の危険を伴います。虫垂炎の典型的な症状が出ていなくても、自分で判断せずに必ずかかりつけ医に相談するようにしましょう。