2017年2月10日
鉄欠乏性貧血は、最もよくみられる貧血で、全身に必要な酸素が十分に供給できていない状態によって起こります。酸素はヘモグロビンと結合することで全身に届けられます。ヘモグロビンに含まれる鉄が欠乏すると、酸素輸送能力が低下し、貧血を引き起こします。鉄欠乏性貧血が起こると、酸素を輸送しようとして心臓や肺が一生懸命に働くため、動悸や息切れ、疲れやすさ、頭重感などの症状が起こります。しかし、貧血がゆっくりと進んだ場合には、症状がほとんどないこともあります。慢性的に鉄が不足した状態が続くと、つめが割れやすくなる、口の端や舌が荒れる、髪が抜けやすくなる、肌の乾燥などの症状が現れる場合があるため、鉄分の補給が必要です。
鉄が欠乏する原因は、鉄摂取量の不足、鉄需要の増加、過剰な鉄損失、吸収障害の4つに分けられます。
鉄摂取量の不足 | 欠食・偏食、無理なダイエット、外食・インスタント食品の多食などの食生活の乱れ等の原因により、鉄や栄養素が不足します。 |
---|---|
鉄需要の増加 | 妊娠・授乳期は胎児の成長や母乳分泌に鉄が多く必要になるため不足が起こりやすくなります。 また、思春期女子では急激な成長により血液量が増加し、鉄の需要も増加して貧血になることがあります。 |
過剰な鉄損失 | 月経(生理)過多や潰瘍、痔、癌などによる消化管からの出血が原因です。 |
吸収障害 | 胃切除などにより胃酸の分泌が不足し、鉄の吸収が障害されます。 |
月経などの失血によって失われた鉄分は、体内で合成する事ができず、食品などから摂取する必要があります。そのため、鉄欠乏性貧血の予防には、バランスのとれた食生活が大切です。食品に含まれる鉄分には、肉や魚など動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、緑黄色野菜・穀類・海藻など植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」があり、ヘム鉄のほうがより効率よく吸収されます。また、動物性食品と植物性食品を組み合わせて食べると、非ヘム鉄の吸収が増加することが知られています。他の栄養素を摂取するためにも、バランスの良い食事を心がけ、偏食・減食・欠食はしないようにしましょう。さらに、緑茶、コーヒー、紅茶に含まれるタンニンは、鉄の吸収を妨げるため、食事中や食後は渋いお茶やコーヒーを飲むのは控えましょう。
1日の食事には、約20~30mgの鉄分が含まれていますが、吸収されるのは約1mg程度。鉄欠乏性貧血になると、1日に20~30mg程度の鉄の補充が必要となる場合もあります。
また、胃切除が原因で貧血が起きた場合は、食事による回復は期待できません。
貧血の症状が続いたり気になることがあったら、かかりつけ医に相談しましょう。