2019年3月4日
橋本病は、自己免疫の異常によって、甲状腺に慢性的な炎症が起こる病気です。病気の程度によっては、甲状腺ホルモンのバランスが乱され、必要以上に甲状腺ホルモンの分泌が低下(甲状腺機能低下)、もしくは増加(甲状腺機能亢進)することでさまざまな症状があらわれることがあります。慢性甲状腺炎ともいい、バセドウ病と同様に、30~60歳代の女性に多く発症します。
甲状腺から分泌される血液中の甲状腺ホルモンは、身体のさまざまな組織の代謝や機能を調整しています。橋本病になると、このバランスが崩れます。なお自己免疫の異常がどのようなきっかけで起こるのかは、明らかになっていません。
多くの場合、甲状腺ホルモンは正常ですが、甲状腺ホルモンのバランスが乱れた場合は自律神経失調症にそっくりの症状がみられるので注意する必要があります。
橋本病にかかって長期間経過すると、甲状腺機能低下がみられる場合があります。心臓とそれを包む心外膜の間(心嚢)に水分が貯留してむくみや息切れなどの心不全症状を示すことがあります。また他の臓器の自己免疫疾患と合併することもあるため、注意が必要です。
甲状腺の位置
橋本病の症状には、甲状腺が腫れることによる症状(甲状腺腫)と甲状腺ホルモンの異常による症状があります。甲状腺腫の大きさはさまざまですが首の腫れやしこり、ものを飲み込む時などの違和感などの症状があらわれることがあります。甲状腺ホルモンの異常は、甲状腺機能低下と甲状腺機能亢進の2通りありますが、前者のケースが多く現れます。この甲状腺機能低下の場合には新陳代謝の低下による症状や、自律神経失調症のような症状があらわれます。具体的な症状を下記に示します。
■むくみ
一般的なむくみは皮膚を指で押さえるとへこみが跡となり残りますが、橋本病の場合はへこみが残らずに戻ります。唇、舌、喉がむくむと声がかすれたりしゃべりにくくなることがあります。
■皮膚症状
皮膚の乾燥、汗をかかなくなる、抜け毛などの症状が見られます。
■寒がりになる
新陳代謝が低下し全身の熱の産生が減り、寒さに弱くなります。
■食欲がないのに体重が増加する
胃腸の働きが悪くなるため便秘、食欲低下がおきますが、新陳代謝が低下するので体重が増加します。
■脈が遅くなる・息が苦しくなる
脈拍が遅くなったり弱くなったります。甲状腺機能低下症が強くなると、心臓と心臓を包んでいる心嚢に水がたまり、心臓の動きが悪くなり息苦しくなったり呼吸困難など心不全症状が出ることがあります。
■無気力
ものごとに対する意欲・気力が低下し行動が緩慢になったり、記憶力が低下し忘れっぽくなります。すぐ眠くなる、口がもつれる、ゆっくりしたしゃべり方になることもあります。
■筋肉症状
筋力の低下や肩こりや関節痛がひどくなることもあります。
■月経の異常
月経不順、不妊や流産の原因になることもあります。
診断には、硬い瀰慢(びまん)性の甲状腺腫を確認するとともに、血液中の甲状腺抗体の有無や超音波像が参考になります。甲状腺ホルモンが不足している場合は、甲状腺ホルモン剤を内服する必要があります。甲状腺機能が正常範囲にあれば治療の必要はなく、年に1回程度の定期的な検査をするだけで問題ありません。ただし、甲状腺機能が正常な場合でも橋本病がある場合にはヨードを含む海藻などを大量に摂取しない注意が必要です。ヨードは甲状腺ホルモンの原料として大切ですが、大量に摂取すると甲状腺機能を抑制します。このような場合にはヨード摂取を制限するだけで機能は回復します。バランスよい食生活を心がけましょう。