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今月の健康コラム

血液のがん「白血病」

2019年5月8日

白血病は「血液のがん」です。数十年前までは、不治の病として恐れられていましたが、現在は医療が進化し、化学療法、造血幹細胞移植、分子標的療法や放射線療法などにより、治る症例も増えてきています。俳優の渡辺謙さん(59)は1989年にAML(後述)を発症し、1994年にも再発していますが、それらを克服して今なお世界的に活躍されています。三大テノールと称される世界的オペラ歌手のホセ・カレーラスさんも1987年にALL(後述)を発症しましたが、72歳の今も未だ活躍中です。

白血病とは

 白血病は血液のがんです。血液細胞には赤血球、白血球、血小板がありますが、これらの血液細胞が骨髄の中で造血幹細胞から分化して行く途中の過程でがんになります。がん化した細胞(白血病細胞)が増殖し正常な血液細胞が減少することにより、いろいろな症状が現れます。

白血病の原因

 白血病の原因と発生機序ははっきりわかってはいません。しかし何らかの原因で遺伝子が傷つくことで、がん細胞が死ににくくなり増殖し続けるのです。その要因にはタバコ、放射線、ベンゼンやトルエンなどの化学物質、抗がん剤などが知られています。「HTLV-1」というウイルスにより成人T細胞白血病(ATL)を発症することも知られていますが、ウイルスに罹患したからと言って、必ずATLになるわけではありません。また、基本的に白血病が遺伝することはありません。

白血病の分類

 白血病は、白血病細胞が未分化な段階(芽球)で増える「急性」と、成熟血球が増える「慢性」に分けられます。さらに白血病細胞の種類によって、骨髄系細胞が増殖する「骨髄性」とリンパ系細胞が増殖する「リンパ性」の大きく4つに分けられます。

  • 急性骨髄性白血病(AML)
  • 急性リンパ性白血病(ALL)
  • 慢性骨髄性白血病(CML)
  • 慢性リンパ性白血病(CLL)

 急性型は増殖のスピードが速いため症状も強く、無治療では2~3か月で生命に危険が及びます。一方慢性型では症状も軽く、年単位で進行します。

急性白血病の症状

 赤血球減少により顔面蒼白、動気、息切れ、倦怠感などの貧血症状が、白血球減少により発熱が続く感染症状が、血小板減少により皮下出血、鼻出血、歯肉出血などの出血傾向がみられます。

慢性白血病の症状

 慢性白血病の初期症状は急性の場合ほどはっきりしないことが多いため気づきにくく、定期健診で偶然発見されることも少なくありません。

  • 体がだるい
  • 体重が減る
  • 寝汗をかく
  • 発熱が続く
  • 左側肋骨下部が痛いまたは腫れている

 などの症状が見られたら、血液検査を受けましょう。

白血病の診断

 血液検査で白血球数の異常(多くは増加していますが、高齢者などでは減少している場合もあります)、赤血球減少、血小板減少などが認められ、自覚症状や身体所見から白血病が疑われた場合は、骨髄穿刺や生検を行い、染色体や遺伝子、細胞表面マーカーなどを解析することにより、細かい分類を行います。

白血病の治療

 全ての白血病細胞を消滅させることを目標としています。複数の抗がん剤を組み合わせた寛解導入療法、その後の寛解後療法(地固め療法、維持強化療法)により段階的に行います。血球数が正常値になり、骨髄中の芽球も5%未満になり、白血病細胞の臓器浸潤も消失することを完全寛解とよびます。完全寛解になっても体内には、計算上10億個以下の白血病細胞が残存しており、放っておけば必ず再発してくるため、維持療法が必要なのです。完全寛解が5年以上続けば治癒したとみなします。

 高リスクでかつ適切なドナーが要る症例では、造血幹細胞移植を行います。また、急性白血病のうち急性前骨髄球性白血病(APL)では、レチノイン酸(活性型ビタミンA)による分化誘導療法によって、白血病細胞を正常な白血球と同様な経過により死滅させます。CMLや一部のALLではイマチニブを使った分子標的療法も行われます。

白血病の予後

 小児ALLでは95%以上が完全寛解となり、標準リスク群の80%以上、高リスク群の60%以上が治癒するものと期待されています。成人ALLでは約80%が完全寛解となりますが、化学療法だけでは寛解例の30%程度しか治癒は期待できません。しかし、成人ALLの約30%を占めているPh染色体(フィラデルフィア染色体:22番染色体と9番染色体間での転座によって、c-ablとbcrという遺伝子が融合し、異常なタンパク質を生じたもの)陽性ALLに対しイマチニブが著効することが判り、このタイプの治癒率も今後相当向上するものと期待されます。前述のAPLではレチノイン酸を中心とする分子標的療法により95%が完全寛解になり、80%以上が治癒できるようになりました。再発しても、亜砒酸やタミバロテンがよく効くため、小児ALL以上に治癒率の高い白血病になりました。

 65歳未満のAMLでは約80%が完全寛解となり、そのうち40%程が治癒するものと期待されています。全ての病型で言えることですが、年齢が若ければ若いほど、治る確率は高くなります。

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