2019年6月11日
目の間や頬、おでこの奥に空洞があります。この空洞を「副鼻腔」といい、副鼻腔の内部は粘膜で覆われていて、鼻腔とつながっています。これらの副鼻腔の粘膜が、風邪のウイルスや細菌に侵され、炎症を起こした状態を「副鼻腔炎」といいます。鼻風邪などで起こった鼻腔の粘膜の炎症が、自然口(鼻腔と副鼻腔をつなぐ通路)を通じて副鼻腔の粘膜に広がることで発症する場合もあります。急性副鼻腔炎の場合は通常1~2週間で治りますが、3カ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎と診断されます。副鼻腔の粘膜が炎症で腫れると、副鼻腔の分泌物を排泄することができず、膿がたまり「蓄膿症」になります。子どもに多くみられますが、大人でも風邪などが原因で急性副鼻腔炎になり、それが完治しないまま放置されて蓄膿症になることもあります。症状は、人によってさまざまですが、熱や痛みはほとんどなく、黄色や緑がかった鼻汁、鼻づまり、鈍痛、頭重感、頭痛などがみられます。このほかに嗅覚障害もあり、異臭を感じたり、においがわからなくなります。副鼻腔炎は気管支など気道の感染防御能の低下と関係していることがあり、せきやたんといった慢性気管支炎の症状が起きる場合もあります。症状が重くなると、炎症によって副鼻腔粘膜の一部が膨らんできます。これは「鼻たけ(鼻ポリープ)」と呼ばれ、鼻腔をふさいでしまい鼻づまりを悪化させることがあります。また、アレルギー性鼻炎やぜんそくのある人は、副鼻腔炎になりやすい傾向があります。
蓄膿症(慢性副鼻腔炎)になると、次のような症状が起こりやすく、睡眠の質や集中力の低下など日常生活に悪影響をおよぼす場合があります。
■鼻をかんでもすっきりしない
粘り気のある鼻汁がたまると、鼻をかんでもすっきりしません。膿がたまってくると、副鼻腔内の粘膜が腫れ鼻腔へ通じる穴がふさがり、強い鼻づまりを感じることがあります。
■ドロッとした黄色や緑色の鼻汁が出る
アレルギー性鼻炎の鼻汁は透明でサラサラしていますが、蓄膿症になると粘度のある黄色の鼻汁に変わります。さらに症状がすすむと緑色の鼻汁になります。
■いびきや睡眠の質の低下
鼻づまりで気道が狭くなると、いびきの原因になります。また口呼吸になると、安眠が妨げられます。
■集中力の低下
頭痛や頭重感、鼻づまり、睡眠不足などから集中力が低下します。
■顔面、歯や目、鼻の周りが痛くなる
副鼻腔内に膿がたまることで顔を圧迫するため、歯や目、鼻の周りが痛くなります。人によっては虫歯ではないのに歯が痛くなる場合もあります。
■味を感じにくい
鼻がつまることによって嗅覚が落ち、食べ物のにおいが分からない、味がしないと感じることがあります。
■鼻汁がのどに垂れて粘つく
鼻汁がのどに垂れて、ネバネバします。後鼻漏(こうびろう)と言われます。声が上手にだせなかったり、咳が出て眠れない場合もあります。
■鼻汁が臭う・口臭がする
膿によって鼻汁が臭う場合があります。そのため自分が臭いと感じたり、のどに流れ込むことで口臭の原因にもなります。
蓄膿症を治すには、炎症をおさえ、膿を出して鼻の通りをよくする治療を行います。膿を吸引したり、鼻の中に薬を吹きつける処置が行われます。鼻の奥の副鼻腔まで届くように、薬剤を霧状にして鼻から吸入するネブライザー治療も一般的です。また、炎症をおさえるために、抗生物質などの飲み薬が処方される場合もあります。症状が重い、または、長引く場合には手術を行うことがあります。
症状が風邪や花粉症と似ているうえ、一緒に起こりやすい傾向があります。そのため、風邪や花粉症などと勘違いして放置すると、受診した時にはすでに慢性化しているケースが多くあります。長く続く場合は、早めにかかりつけ医に相談し、耳鼻咽喉科を受診しましょう。