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今月の健康コラム

増加する目の病気「加齢黄斑変性」

2020年8月7日

黄斑とは網膜の中心部に位置する視力をつかさどる部分です。加齢黄斑変性は、主に加齢に伴ってこの黄斑がダメージを受けて、ものが見えにくくなる病気です。欧米で多く、日本でも増加傾向にあります。50歳以上の約1.2%にみられ歳を重ねるごとに多くなります。日本人では男性に多いのが特徴です。これまで有効な治療法がなかったために、治療を行っても中心部の視力を失うことも多くありましたが、病型によっては病状の改善や進行を遅らせることが可能になりました。

目の仕組みと加齢黄斑変性について

 目をカメラとしたとき、網膜はカメラのフィルムにあたります。黄斑は網膜の中心にある直径1.5~2mm程度の大きさで、細かいものを識別したり、色を見分ける役割を担っています。加齢黄斑変性は、加齢などによって、黄斑付近の組織に出血や萎縮などの異常が生じ、黄斑が傷んでしまうために、視力の低下や視界に歪みが生じます。

 黄斑付近の組織に発生する異常の原因によって、萎縮型と滲出型の2つの病型に分けられます。萎縮型は、黄斑を含む網膜の加齢変化の病的状態で、徐々に萎縮していきます。一方、滲出型は日本人に発症しやすく病状の進行が早いと言われていますが、脈絡膜に生じた新生血管と呼ばれる異常な血管が、黄斑付近に侵入して起こります。新生血管は正常な血管とは異なり、破れたり、血液成分の漏出が起こりやすく、それに伴って網膜がむくんだり網膜の下に液体が溜まります。

 発症の原因は明らかではありません。歳を重ねるとともに発症する可能性がありますが、それだけではなく、喫煙や紫外線、高脂肪食の摂取、肥満、抗酸化物質の摂取不足なども発症リスクを高めるのに関係しているといわれています。

加齢黄斑変性の症状

 網膜の中心部にある黄斑部分に異常を起こすため、視野の中心の見え方に異常があらわれます。中心部分にグレーにかすんだり、見えないところ(中心暗点)や歪み(歪視)が生じ、視力も低下します。視野の中心以外にはほとんど影響もないため通常の歩行等は可能です。読み書きができなくなったり、相手の表情がわからなくなったりなど「見たい部分が見えない」という不便が生じます。

加齢黄斑変性の予防・治療法

 萎縮型には有効な治療はありませんが、網膜の加齢変化の病的状態を進めないためにサプリメントや生活スタイルの見直しが有用とされています。

 滲出型加齢黄斑変性に対して現在行われている主な治療は次の3つとなります。

  • 抗VEGF療法
    眼球内にVEGFという物質が増えることにより新生血管が作られたり網膜がむくんだりします。この物質の働きを抑えるために、抗VEGF薬を眼球内に注射で投与します。効果は一時的なため定期的に継続投与が必要となりますが、この治療により、視力を改善維持させたり病状進行を抑える効果が向上しました。現在ではこの抗VEGF療法が主流となっています。
  • 光線力学的療法(PDT)
    光に反応する薬剤を腕の静脈から投与し、弱いレーザーを照射して、新生血管を閉塞させる治療です。抗VEGF療法が登場するまではこの方法が治療の主流でありましたが、その有効性は抗VEGF療法に劣ることが報告されています。
  • レーザー光凝固術
    黄斑中心部から大きく離れている部位に病巣がある場合は、レーザー光線を照射することにより新生血管の成長を止めることができます。しかし正常組織にも影響が出るため、適応となる症例は多くないと考えられています。

 治療法の開発が進んだことで、病気の進行を遅らせることが可能になりましたが、網膜の視細胞は一度破壊されると再生することはできません。発症させない、あるいは発症しても網膜の傷害を最低限にとどめるために、予防と早期発見を心がけましょう。加齢黄斑変性の予防で、最も重要なのは禁煙です。喫煙は加齢黄斑変性の最大の危険因子であるため、速やかに禁煙しましょう。また、食事やサプリメントで栄養のバランスを整えるのも大切です。特に抗酸化ビタミンを含むミカンや大豆、玄米などの食材や、ミネラルを含む牡蠣や海藻などの食材を摂取するようにしましょう。緑黄色野菜も発症リスクを下げると考えられています。

 歪みという症状は、加齢黄斑変性に限らず黄斑部の異常で生じます。黄斑部が障害されると視力の改善が困難なことが少なくありません。自覚症状に気づいたら、生活に支障がないからと放置せずに眼科を受診しましょう。

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