2020年9月7日
パニック障害は、理由なく突然強い不安感や動悸、発汗などの症状が起こる病気で、特に電車やエレベーターなどの閉じられた空間で起きやすいとされています。患者自身が発作を過度に心配してしまい、外出などが極端に制限されます。
原因はまだはっきりとは解明していませんが、近年の研究によって、脳の機能異常が関係しているのではないかといわれています。不安や恐怖などの感情に深くかかわっている扁桃体などの脳の部位が過剰に活動することで、心拍数の増加や呼吸が浅くなるなどの発作のような症状が引き起こされると考えられています。本来、不安や恐怖は危険を回避するための防御反応ですが、脳の機能が過敏になったことで、少しの刺激に対しても反応してしまいます。また、発症には理由や予兆はないとされていますが、過去になんらかのきっかけがあったり、発症前のストレスが多かったりなど、心理的要因も少なからず関係しています。
パニック障害の主な症状は、パニック発作、予期不安、広場恐怖の3つです。パニック障害において最も特徴的な症状はパニック発作であり、予期不安と広場恐怖はこの発作に伴う二次的な症状です。
パニック発作は、動悸や胸苦しさ、めまい、死ぬかもしれない恐怖などの症状が突然起こります。このような発作は、強迫性障害やPTSDなどの精神疾患でもみられることがありますが、パニック障害の発作として特徴的なのは、原因がなく、いつどこで起こるかわからない「きっかけのない発作」であることです。
予期不安は、再び発作が起こることへの不安、発作を起こしたことへの不安、発作が原因で仕事をやめるなど、行動によって起こる環境の変化とそれに対する不安、という3つの不安のうち、いずれかが1カ月以上継続することを指します。特に、1つ目の再び発作が起こることに対して感じる不安が多いとされています。
広場恐怖はほとんどの患者に起こり、パニック発作が起きた時に助けが得られない状況や恥をかくような場所・状況を避ける症状で、具体的には、1人での外出や乗り物、人混み、美容院などへの外出が出来なくなります。これにより通勤や出張、買い物などが困難になり、日常生活に支障をきたします。同伴者がいれば行動可能な場合もありますが、家族への依存などから生活範囲が縮小し、生活の質が低下してしまいます。
パニック障害の治療は薬物療法と精神療法があり、併用するのが良いとされています。薬物療法は、抗うつ薬と抗不安薬の2種類の薬を用います。効果は人によって異なるため、用量を守って服用することが大切です。また、パニック障害は再発しやすい病気であるため、病状に改善がみられてもすぐに薬を中断せず、かかりつけ医と相談して減薬するようにしましょう。
精神療法は、予期不安や広場恐怖の改善を目的に行います。具体的には、自身で不安をコントロールすることを目指したり、病気を正しく理解する「心理教育」などがあります。なかでも、「曝露療法」と呼ばれる段階的な行動練習を行う治療法は、広場恐怖の克服につながります。電車の克服を例にすると、1段階目は付き添いをしてもらい乗車する、2段階目は同伴者と車両を分けて乗車する、3段階目は1駅だけ1人で乗車する、と容易な段階から徐々に成功体験を重ねていきます。
この2つの治療法以外にも、たばこやアルコールを控えたり、規則正しい生活を行うことは、パニック障害の改善につながります。周囲の人たちの協力を得ながら、少しずつ不安と向き合っていきましょう。