2020年11月2日
前立腺は膀胱のすぐ下で、尿道の周りを取り囲むように位置する臓器です。精液の生成や射精に関係しており、加齢とともに肥大化する傾向が強いとされています。前立腺肥大症は前立腺が肥大化することにより、排尿困難や頻尿、残尿感、夜間の頻尿などの排尿障害が起きる病気です。病状が軽いからといって放置すると、さまざまな合併症を引き起こしたり、前立腺がんなど重大な病気の発見が遅れたりする可能性があるため、症状があれば、速やかに医療機関を受診しましょう。
前立腺は尿道を取り巻く内腺と、その周りにある外腺からなる臓器で、通常クルミほどの大きさをしています。前立腺肥大症はこの前立腺の内腺が大きくなることで、尿道が圧迫されたり膀胱が刺激され、様々な排尿障害が起こる病気です。前立腺は男性ホルモンなどの影響により、加齢とともに大きくなる傾向が強く、早ければ40代を過ぎると発症し、80歳までには80%の人に肥大化がみられるといわれています。前立腺の大きさと排尿障害は必ずしも比例せず、肥大していても治療の必要がない場合もあります。
前立腺肥大症の症状は、尿道の物理的圧迫による閉塞症状、膀胱への刺激による過敏症状、排尿後もすっきりしない排尿後症状などがあります。
(1)閉塞症状 | 肥大した前立腺が尿道を圧迫することで、すぐに尿が出ない遷延(せんえん)性排尿、尿をしている時間が長い苒延(ぜんえん)性排尿、尿の勢いが弱い尿線狭小、お腹に力を入れないと尿が出せない腹圧排尿などの症状ががみられます。 また、閉塞が高度になると、尿を出し切れずに膀胱に尿が残る残尿を引き起こします。完全に尿が出ない(尿閉)場合や、ちょろちょろとあふれ出る溢流(いつりゅう)性尿失禁がみられる場合は、尿道留置カテーテルを入れる必要があります。 |
---|---|
(2)膀胱刺激症状 | 肥大した前立腺が膀胱を刺激することで、尿がたまっていないにも関わらず尿意を感じます。これにより尿の回数が増加したり、排尿しようとする前に尿が漏れてしまう切迫性尿失禁などの症状がみられます。 |
(3)排尿後症状 | 排尿がすっきり終わった感じがしない、残っている感じ(残尿感)、排尿が終わった後に尿が少し垂れてくる排尿後滴下などの症状がみられます。 |
前立腺肥大症を放置すると、尿中や前立腺に細菌が繁殖する尿路感染、尿中成分が結石化してしまう膀胱結石など、さまざまな合併症が起こりやすくなります。また膀胱内に多量の尿が残ることで、尿を生成する腎臓に負担がかかり、腎機能障害を引き起こす可能性があります。前立腺肥大症の症状は前立腺がんでもみられるため、病状が重くないからといって放置すると、前立腺がんの発見の遅れにつながります。
前立腺肥大症の治療では、病気の進行度合いや年齢にあわせて、薬物療法や手術療法、行動療法が行われます。
「加齢のせい」と放置せず、できることから対策を始めることが大切です。排尿障害を感じた場合は、かかりつけ医に相談するか、泌尿器科を受診しましょう。