2021年2月8日
食道がんは、食道の粘膜に悪性の腫瘍ができる病気です。病気が進行するにつれて、飲食物がつかえやすくなったり、胸や背中に痛みを感じるようになりますが、初期の自覚症状はほとんどありません。早い段階で他の臓器に転移する可能性が高いため、定期的に検査を受け、早期発見・早期治療につなげることが大切です。
食道は咽頭と胃の間にある約25cmほどの管状の臓器です。消化機能はなく、食物を胃に運ぶ役割を担っています。咽頭側から頚部食道と胸部食道、腹部食道の3つの部位に分けることができます。この食道の粘膜に悪性の腫瘍(がん)ができる病気を食道がんといいます。日本人の約半数は食道の中央付近から発症します。
発症の主な要因は飲酒と喫煙です。飲酒時に顔が赤くなる体質の人、飲酒と喫煙の両方の習慣がある人はリスクが高くなります。
男性の発症率が高く、年齢は50歳代から増加し、70歳代がピークです。
食道がんは、初期の自覚症状はほとんどありませんが、早期発見のために注意しておきたいのは胸の違和感です。飲食物を飲み込んだ際に胸の奥がチクチク痛んだり、熱いものを飲み込んだ際にしみるような感覚がみられます。この違和感は、一時的に感じられなくなることがあるので注意が必要です。
腫瘍が大きくなると、その分食道が狭くなり、嚥下の際に飲食物がつかえるようになります。飲食物をうまく飲み込めないので、食事量が減り、体重も減少していきます。
さらに病気が進行しがんが食道の壁を越えて肺や背骨に広がると、胸や背中に痛みを生じたり、気管や気管支に広がって咳が出ることがあります。声帯を動かす神経に影響が出ると声がかすれることもあります。
食道がんは、がんが進行して初めてさまざまな症状があらわれることが多いため、些細なことでも気になる症状があればかかりつけ医などを受診しましょう。
食道がんの治療法は、大きく分けて内視鏡治療、手術、放射線治療、化学療法の4つです。がんの進行状況や体の状態などを考慮した上で、適した治療を行います。
1.内視鏡治療
食道内視鏡で食道の内側からがんを切除します。がんに輪状のワイヤーを付けて絞め、高周波電流で切除する内視鏡的粘膜切除術と、粘膜層をはぎ取るような形でがんを切除する内視鏡的粘膜下層剥離術の2種類があります。
2.手術
がんを含めた食道と胃の一部を切除します。リンパ節への転移を防ぐため、同時にリンパ節を含む周囲の組織も切除します。切除後は、切除した食道に代わる新しい食物の通り道を作る再建術を行います。手術方法はがんが発生した食道の部位によって異なります。
3.放射線治療
高エネルギーのX線などをがんに直接照射し、小さくします。食道や胃を温存することができる治療法です。化学療法と併用すると効果的です。がんを治すための根治照射と、症状を抑えるための緩和照射の2種類があります。
4.化学療法
細胞障害性抗がん剤と呼ばれる、がん細胞を小さくする効果がある薬を用います。食道がんに使われる主な抗がん剤には、フルオロウラシル(5-FU)、シスプラチン、ネダプラチン、ドセタキセル、パクリタキセルがあり、それぞれ用法や作用が異なります。
放射線治療や手術と併用することもあります。
治療法は年々進歩していますが、最も大切なのは早期発見です。定期的に検診や人間ドックで胃カメラ検査を受け、少しでも違和感を感じる場合にはかかりつけ医を受診するようにしましょう。