2023年5月11日
ウェルニッケ脳症は、ビタミンB1が不足することによって意識障害や眼球運動障害、歩行時のふらつきなどの症状が現れる病気です。約半数がアルコール依存症をきっかけに発症しますが、消化管手術や重度の悪阻(つわり)などに伴って生じることもあります。発見が遅れると命に関わる恐れがあるため、発症が疑われる場合には、すぐに医療機関を受診しましょう。
私たちの脳の神経細胞は、ブドウ糖から産生されるエネルギーのみを用いて機能しています。ブドウ糖を分解し、エネルギーに変換するためにはビタミンB1が必要です。つまりビタミンB1の不足は、脳の神経細胞のエネルギー不足に直結するというわけです。これにより脳にさまざまな障害が現れた状態を、ウェルニッケ脳症といいます。
ビタミンB1は、アルコールの過剰摂取によって吸収されにくくなることがわかっています。アルコール依存症の場合は、食事を十分に摂取していなかったり、大量のアルコールを分解するのにビタミンB1が使われたりといったことから、慢性的なビタミンB1不足となっていることが多いとされています。
代表的な症状には、錯乱や傾眠などの意識障害、目の震えなどの眼球運動障害、歩行時のふらつきの3つが挙げられます。これらは同時にみられることは少なく、約8割の人が3つのうちのいずれか、あるいは2つの症状を伴います。上記の症状から早期発見された場合は回復が見込めますが、放置すると昏睡状態となり、命に関わる恐れがあります。
また発見が遅れた場合には、高確率で後遺症を引き起こします。作話や直近の記憶を忘れるなどの症状がみられる脳障害の一種で、コルサコフ症候群と呼ばれています。
発症した際には、静脈注射によるビタミンB1の大量投与を行います。
予防のためには、食事でビタミンB1を積極的に取り入れることが大切です。豚肉や魚、ブロッコリーなどの食品に多く含まれているため、摂取を心がけましょう。またアルコール依存症が原因で発症した場合には、再発を繰り返さないようすぐに飲酒を止める必要があります。
ウェルニッケ脳症は早期に発見し、治療に臨むことが非常に重要です。発症が疑われたら、すぐに医療機関を受診しましょう。