2024年6月10日
大腸菌は家畜や人の腸に生息しており、ほとんどのものは無害とされています。しかしなかには消化器症状や合併症を引き起こす菌も存在し、これを病原性大腸菌といいます。腸管出血性大腸菌はその一種で、子どもや高齢者は、感染すると命にかかわることもあります。発症が疑われる場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
腸管出血性大腸菌は、ベロ毒素と呼ばれる毒素を産生する大腸菌です。菌の成分によっていくつかの種類に分けられ、O157、O26、O111などが知られています。全国で毎年3,000~4,000件程度の発生が報告されています。
菌に汚染された食品や水を摂取したり、菌が付着した手で食事をしたりといった経口感染が多く、原因となる食品は多岐にわたります。わずか10~100個の菌が病気を発症させるほどの、感染力の高さが特徴です。
時期を問わず発生する可能性がありますが、気温が高い季節は特に注意が必要です。
3~8日程度の潜伏期間を経て、激しい腹痛を伴う水溶性の下痢がみられます。その後血便が出ることもあります。症状は個人差が大きく、軽度の下痢のみの場合もあれば、全く症状が現れないこともあります。
子どもや高齢者の場合は、重症化しやすく、合併症を引き起こすリスクも高いといわれています。重篤な合併症の一つである溶血性尿毒症症候群は、患者のうち数%が発症するといわれ、腎臓や脳に影響を及ぼし命にかかわる恐れがあります。
まずは症状の原因が腸管出血性大腸菌であるかを確認するために、医師の診察を受けることが大切です。一般的な下痢止めや痛み止めの薬のなかには、毒素が排出されにくくなるものもあるため、個人の判断による服薬は避けましょう。
食品の取り扱いに注意し、消毒を徹底することが予防につながります。食品は低温で保存し、調理の際にはしっかりと加熱するように心がけてください。75度以上で1分以上加熱すると、菌は死滅するといわれています。また調理前や食事前、トイレ使用後は石けんと流水で念入りに手を洗いましょう。