2024年9月10日
溶血性レンサ球菌(以下、溶連菌)は、子どもののどの病気を引き起こす菌として知られ、感染しても無症状の場合もあります。しかしまれに、通常細菌が存在しない血液や筋肉などに溶連菌が入り込み、「劇症型」と呼ばれる重篤な症状を引き起こすことがあります。致死率は3割に上るともいわれ、今日感染者数が急増しているため、注意が必要です。
溶連菌は子どもが感染するイメージをもたれることが多いですが、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の場合は幅広い年齢層で発症がみられます。特に30歳以上の大人に多いことが特徴の一つです。免疫不全などの基礎疾患を持っていないにも関わらず、突発的に発症し、急速に病状が進行するのが特徴です。特に妊産婦の場合は、進行が速いといわれています。
傷口や飛沫を介して粘膜から菌が侵入して発症すると推測されていますが、感染経路が不明であることが多いです。
発症すると、まず発熱や悪寒などの風邪のような症状のほか、手足の痛みや腫れ、吐き気などの消化器症状や血圧低下などが現れます。その後数十時間で軟部組織の壊死や呼吸状態の悪化、多臓器不全などが起こります。重症化するメカニズムは、明らかになっていません。
抗菌薬による治療が行われ、壊死している部分を切除して感染拡大を防ぎます。また多臓器不全を防ぐために、集中治療及び管理を要します。
発症はまれですが、日ごろから傷を清潔に保ち、手洗いうがいなどで予防することが大切です。2024年の患者数は1333人(2024年8月11日現在)で、統計開始から最も多かった2023年の941人を超えています。数時間で症状が著しく悪化するため、思い当たる症状がある場合は直ちに医療機関を受診してください。